2011年10月06日

フィギュアの造形的基準について

人間の身体には、骨が埋め込まれています。

骨ですから、これは固くて変形しません。

人体造形全てで言えることですが、固くて変形しない骨が造形時の基準になります。

粘土は柔らかくていくらでも変形させられるので、どこかで基準を見つけないと、どこまで変形させていいのかがわからなくなってしまいます。

「ここから先はヘコませると不自然になる」という境界を、骨の表面に求めるわけです。

これは、デフォルメされた2次元イラストを立体化する場合にも、当てはめることができます。

デフォルメされた2次元イラストの人体には、それに合ったデフォルメが施された骨が内部に埋め込まれている、と考えて造形をした方が、より自然な立体となるでしょう。

人体そのものを造形する場合の基準は骨になりますが、次の段階の、衣服を造形する場合には、今度は人体の表面である皮膚面が基準になります。

皮膚面を超えて彫り込んでしまったり、あるいは皮膚面にまで届かないシワなどを造形してしまうと、不自然になります。

このために、できれば人体造形は、まず素体であるヌードモデルを製作して一度硬化させてから、その表面を基準にして衣服を製作していけば、不自然な造形になりにくくなるということが言えます。

もちろん皮膚面は柔らかくて弾力があるので、固い面として捉えるだけでは自然な造形にならないということはありますが、いきなり衣服着用の人体を製作するよりも、自然な造形ができることは間違いありません。

この論で行けば、身体も、まずは骨を作ってからその表面を基準にして造形、ということになります。

しかし、あまりそういうことをしているフィギュア造形を見かけることはありません。

なぜでしょうか?

手っ取り早く言ってしまえば、そこまで本物の人体骨格にこだわる必要がない、ということになります。

前述の基準の話とは矛盾しているように思われるかもしれませんが、わざと人体骨格の基準を外してしまった方が、フィギュアではよりカッコ良く見える場合があるのです。

ここが、デッサンの学習として行う美術彫刻とフィギュアの違い、と言えるかもしれません。

美術彫刻は正確な人体の再現を目的にする(語弊があるのは承知の上で)リアル指向であることに対し、フィギュアは正確さよりも、より「記号」を重要視する、とでも言えばいいのでしょうか。

正確な人体バランスよりも、カッコ良いと思える記号を重要視する。

例えば、平均的な人体より腕が短かかったとしても、それでカッコ良く見えるのならば、フィギュア造形ではそうするべきなのです。

この「記号」を重要視した結果が、アニメキャラクターの眼の大きさであったり、2頭身であったりするのです。

しかし、だからといってフィギュア造形時に、人体造形の基準となる骨の存在を忘れてもいいかと言えば、決してそうではありません。

フィギュア造形においても、やはり骨は、重要な基準となります。

正確さを期すためにではなく、不自然さをなくす基準として、骨の存在は常に頭に置いておかなくてはなりません。

一例として、頭蓋骨の頬骨を考えてみましょう。

頬骨は、頭部造形時の重要な基準となる、眼のななめ下外側の出っ張った部分です。

どれほどデフォルメされたキャラクターであったとしても、頬骨の存在を無視したものはありません。

この部分が上手く表現できているかどうかで、キャラクターの可愛さやカッコ良さも違ってきます。

無視してしまうとカッコ良いどころか、不自然になってしまう基準、という意味で、骨はやはり大きな基準となるのです。

では、どの骨を重要視してどれを基準から外すか? という問題ですが、これは簡単には説明できません。

はっきり言ってしまえば、造形者のセンスと判断です。

これからフィギュア造形をしようとするならば、このセンスと判断力を磨かなければなりません。

そうすることにより、フィギュアをよりフィギュアらしく造形できるようになるのです。

では、このセンスというものは、どのように勉強していけばいいのでしょうか。

センスをどう磨くか、という問題をきちんと解説した文献は、おそらくほとんどないと思われます。

なぜなら、これは解説不能の問題であり、個々人がどう生きてきたかに関わる事柄であるからです。

加えて、もしセンスを完全に解説できたとしても、それを文献にして発表しようとする表現者は現れないとも思います。

技術や手法は、学習や訓練によってある程度は誰にでも習得できるものです。

しかし、センスはそれができない、いわば表現者にとっての最後の砦なのです。

小説を例に挙げるとわかりやすいと思いますが、文字は誰にでも書くことができます。

しかし、その文字の羅列を、小説という形でひとつの独自世界を構成するまでに昇華するには、センスが必要です。

このセンスを解説してしまうことは、小説家にとっては最大の武器(もっと言えば、飯の種)を公開してしまうことと同義なのです。

おそらく同じことが、フィギュア造形にも言えるのではないでしょうか。

したがってセンスは、各自が自分で見つけ出したり創り出したりしなければいけないものなのです。

それぞれが自分だけのセンスを見つけ出すからこそ、それが個性となり、ひいては商品価値にまでなっていくのです。

ひとつだけ言えることは、これからセンスを磨きたいと思うなら、映画、小説、絵画、彫刻、アニメ、もちろんフィギュアも、とにかくいろいろな作品に触れることだと思います。

どうして造形に映画が必要なのか、と問われると、なかなか納得のいく答えを返すことは難しいのですが、簡単に言えば、自分は何が好きなのか、どういうものがカッコ良いと思うのか、美しいと思う物がどのようなものなのか、ということを、できるだけはっきりと自覚するため、と言えるでしょう。

逆に言えば、様々な作品に触れることにより、自分には向いていないなと自覚できる、逆センスともいうべき感覚も得ることができるようになるでしょう。

この両方をはっきりさせておけば、センスはさらに磨かれていきます。

こうしたい、と思うと同時に、こうはしたくない、という感覚も、重要な要素となるからです。

簡単なことではないのですが、この部分を意識しながら様々な作品に接していけば、自分の好みがはっきりとし、それがセンスや個性と直結していくことになると、私は考えます。

正確なデッサンよりも、記号というあいまいなものを相手にするフィギュア造形は、造形者のセンスが問われる、言うならば総合造形と言ってしまってもいいような分野であると思います。

これからフィギュア造形を始めようと考えている方々には、できるならば食わず嫌いをせずに、たくさんの様々な作品に触れてほしいと思います。
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2011年10月03日

頭部(基本形)の製作

個人的な理由により、長期間更新が滞ってしまったことをお詫びします。

この回より、ようやく造形作業に入っていくわけですが、本来は造形作業以前に、これから製作しようとする作品のデザインを決定して固めなければなりません。

しかしこのデザイン問題は、それだけでひとつの専門分野であり、とてもこのブログで簡単に解説できるような事柄ではありません。

この先ところどころで私個人の考え方や方法を書いたりはすると思いますが、このブログの趣旨がフィギュアの実際的製作方法解説であることを考えて、現時点ではデザイン手法の考察、解説は控えようと思います。

そこで、いきなり製作に入ってしまうわけですが、デザイン手法の解説を控えるとしたわけですので、まったくのゼロの状態から始めようと思います。

ゼロと言っても、以下の点だけはすでに決まっています。

*すでに芯はできているので、サイズは1/8スケール。
*デフォルメ具合は、芯から類推できる程度。
*性別は女性。
*全体のデザインやポージングは、フィギュア制作の基本となるような比較的簡単なもの。

これら以外は、制作する過程のその場その場で考えながら(思いつきで)進めて行こうと思います。


・頭部基本形の製作

頭部基本形というのは、リアルタイプにもデフォルメタイプにも、どちらにでも使用できる大元になる形状という意味です。

以下の解説では、実際の造形作業の途中画像と共に、作業をCGで擬似的に再現した画像を同時掲載してみます。

実際の作業は、スケールが1/8ということもあり、実写だけではわかりにくい部分があるかと思いますので、CG画像も共に参考にしていただければと思います。



芯の製作で作った頭部を使用します。

単純にスカルピーを丸めて焼き固めただけの塊で、大きさは直径で15oほどです。

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スカルピー表面にエナメルシンナーを塗布します。

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焼き固めたスカルピー表面に、新たにスカルピーを盛りつけようとしても、なかなか上手く接着してくれません。

そのために、接着剤代わりにエナメルシンナーを使用します。

参考
スカルピー同士の接着には、便利な材料が市販されています。

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「リキッドスカルピー」という商品で、スカルピーと同じくポリフォーム社が製造しています。
商品名の通り液体状のスカルピーで、熱硬化型です。
これを硬化したスカルピーの表面に塗布し、その上に新たにスカルピーを盛りつければ、ほぼ確実に接着させることができます。
スカルピー造形を続けようと思われる方は、ぜひ入手して試していただきたいと思います。
ちなみに、画像右に写っているものは軟化剤で、スカルピーの粘度を変えることができます。
スカルピーを液体状にまで粘度を落としてリキッドスカルピーと同じように使うなど、工夫により様々な使い方ができます。


芯の上から、新たにスカルピーを盛りつけます。

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スカルピーを上から重ねただけでは、なかなかしっかりとは接着しません。

こすりつけるように押しつけて、粘り付かせるようにしてください。

新たに盛ったスカルピーが簡単にはがれてしまうようだと、この後の造形作業が難しくなってしまいますので、ここは時間をかけても確実に盛りつけましょう。

あまりたくさんスカルピーを盛りつけるのではなく、芯の表面を数ミリ覆う程度で良いと思います。


スカルピーを盛りつけて、おおまかなカタチに成形します。

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頭部の前後を決めて、アゴと額、後頭部を出っ張らせるようにスカルピーを盛り付け、全体的には細長いタマゴ型になるようにします。

このとき、左右の耳にあたる部分は、あまり盛りつけ過ぎないように気をつけてください。


目鼻の基準となる線を彫り込みます。

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正面から見たときに、中心からわずかに下になるように横線を引きます。

これがおおよその眼の位置になります。

縦線は、中心にまっすぐ引きます。

この線上に鼻筋が通ります。


眼窩にあたるへこみ部分を作ります。

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大きめのスパチュラを使い、ざっくりと削り落として下さい。

埋まっていたパイプを取り除いた跡、とでも見えるような感じでかまいません。

位置は、横線の真上ではなく、わずかに下側です。

画像を参考にしてください。

このパイプの跡状のへこみが、眼窩と眼の下から頬へつながるラインになります。


鼻のおおまかなカタチを刻みます。

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鼻の長さやバランスについては、参考書を見るとだいたいの比率などが書かれているのですが、そのような数字的なものよりも、自分の感覚を信じて、こんな感じだろうと思うバランスで刻んでみてください。

鼻だけでなく、身体のいろいろな比率が数値化されていますが、それよりも自分がカッコ良いと思うバランスを信じた方が良いと思います。

たとえそれが一般的な比率から外れていようと、それをカッコ良いと思うのなら、それは造形的な個性へとつながるものだからです。


眼の下から、頬へとつながる面を作る。

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眼の下側にあたる部分に横線を引き、目尻から小鼻にかけて緩やかな曲線で結びます。

三角形ができるので、そこに平面ができるように余分なでっぱりを削ぎ落とします。

曲面にする必要はありません。

デザインナイフで削いでもいいでしょう。

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このときに目尻から小鼻にかけての線が消えたなら、もう一度刻んでおきます。

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この状態を横から見ると、おおよそこのようになります。

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顔面下部の基準線を引きます。

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頬のおおまかなカタチを出していくための、基準線を刻みます。

小鼻から頬、エラにかけての面は、造形を始めてからしばらくはなかなか難しい部分だと思います。

どうしても平面的な、いわゆるカマキリ顔になりがちなところですので、前後左右を何度も眺めながら、時間をかけてゆっくりと造形するべき部分です。

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頬のふくらみ部にスカルピーを盛る。

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小鼻からエラにかけての斜めのライン上に、スカルピーを盛りつけます。

この頬の部分は、顔面の中でもキャラクターの違いによる変化が大きい場所です。

この造形の場合、女性の柔らかな頬を目標にしていますのでふっくらとさせようとスカルピーを盛りつけますが、頬がこけた男性などの場合は、また違ったアプローチになると思います。

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頬に盛りつけたスカルピーを均して、面を作る。

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盛りつけたスカルピーを均していくと、ななめ横から見たときの頬のラインが出てくるので、この段階から徐々に顔面の全体のカタチとラインを意識しながら進めると良いでしょう。

面を均した後、もう一度ラインを刻んでおくと、わかりやすいかもしれません。

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顔面の側面、頬骨から口元、エラにかけてのラインを引き、面を作る。

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線を引いて、できた面を平面にするような感じで整えます。

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顔面は、とても複雑な曲面でできています。

しかし単純化して見ると、いくつかの平面の組み合わせで再構成できるものです。

ここで紹介している方法は、まずは顔面を平面分割してしまい、それぞれの面をざっくりと出してしまう造形法です。

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アゴからエラにかけてのラインを引く。

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アゴからエラにかけてのラインを引きます。

作業画面ではやっていませんが、このときに耳の位置も刻んでおくと良いと思います。

エラの位置やカタチは、顔面の中でも重要な部分です。

正面から見た顔のカタチは、エラによって決まってくるとも言えます。

また、デフォルメの仕方によっては、エラの前後位置が大きく変化します。

傾向としては、リアル造形ほどエラの位置はアゴから遠くなり、デフォルメされたアニメキャラでは、エラは前方に移動してきます。

ですが、ここではまだそこまで細かな配慮はいりません。

だいたいの、標準的なエラのカタチを刻んでおけば良いでしょう。

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エラ部分にスカルピーを盛りつける。

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エラ部分(CG画像の赤線部分)にスカルピーを盛りつけます。

あまりたくさん盛らないようにしてください。

正面から見て、わずかにエラの端が見える程度が良いでしょう。

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顔面下部を整える。

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エラに盛りつけたスカルピーを、顔面下部全体のバランスを見ながら整えます。

このときにも、平面の組み合わせをできるだけ意識して下さい。

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ここまでで、おおよその頭部基本形ができてきました。

ここから先は、どのようなタイプの頭部造形を行うかで分かれてきます。

頭部、顔面造形は、フィギュア造形はもちろん、あらゆる造形物の基本となる部分です。

面構成が複雑で、簡単には思うような造形ができないとは思いますが、できるならば何度も繰り返して、いくつか頭部基本形を作ってみてください。
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2011年07月08日

スパチュラについて

・スパチュラは、個人専用

この先の工程では、ここまでで紹介してこなかった重要な道具を使うことになります。

その道具は、粘土を使ってフィギュアを作る場合に欠かせない道具、スパチュラ(spatula)です。

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(スパチュラ各種)

スパチュラとは一般的な道具である「ヘラ」をあらわす言葉ですが、フィギュア造形においては、大きくて平べったい道具というイメージではなく、もっと先端の小さな、細かな細工用の棒、というところでしょうか。

粘土は柔らかな塊なので、指先で充分にカタチを変えることができます。

しかし、指先で変えられるカタチには限度があります。

1/8程度の大きさのフィギュアでは、全体の大まかなカタチやだいたいのポージングぐらいまでが、指先でできる限界ではないでしょうか。

指先での造形が限界に達したら、その先はスパチュラの出番です。

スパチュラは指先の延長となり、指先だけでは限界がある細かなディティールを、粘土表面に刻み込むことが可能となります。

ここで注意しなければいけないことは、「スパチュラ」とひとことで言っても、その内容は千差万別だということです。

スパチュラは指先の延長、と書きましたが、これは比喩ではありません。

スパチュラを使い慣れてくると、指先の繊細な感覚がそのまま、スパチュラの先端を通して粘土表面に伝わるのがわかるようになると思います。

そして、指先の感覚が人それぞれで違うように、その延長となるスパチュラが人それぞれで違うモノになることは当然のことであり、スパチュラという言葉に含まれる道具の内容(おおまかに言えば先端の形状)も、使う人の数だけほぼ無限にあるということになります。

これはすなわち、スパチュラという道具を一般化して説明や解説をすることはほとんど不可能であり、無意味であるということです。

しかし、だからと言って、説明不可能です、としてここで終わるのはあまりに気が引けてしまいます。

ここからは、私が普段使用している私専用のスパチュラをご紹介していきますが、前述したように、私専用のスパチュラが他の方々にとっても使いやすいとは限りませんので、あくまでも参考としてお読みください。


・スパチュラの種類「ヘラ型」と「球型」

私が使用しているいくつかのスパチュラの画像は冒頭に掲載しましたが、よく見ていただくとそれらは、おおまかにふたつのグループに分けられるのがわかると思います。

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(ヘラ型スパチュラ)

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(球型スパチュラ)

スパチュラはだいたい二つのグループ、「ヘラ型」と「球型」に分けられます。

もちろんこのふたつ以外にも、針状のものやナイフ型の形状をしたものもありますが、用途は限られますし、これらはスパチュラというには無理がある形状をしていると思いますので、別の道具としてここでは除外しておきます。

以下に、私が日常使用しているスパチュラの、先端部の画像を掲載してみます。

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これらのヘラ型スパチュラは主に、筋状のディティールを粘土表面に施すために使用します。

簡単ですが、ヘラ型スパチュラを使った髪の毛状ディティール造形の例を挙げてみます。

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スカルピーを小さな房状にして、三つほどくっつけてみました。

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大きめの先端を持つスパチュラを使用して、スカルピー表面にざっくりしたディティールを入れました。

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スパチュラはそのままで、表面の凹凸を調整します。
アニメ調デフォルメなら、この状態で終わらせてもいいかもしれません。

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小さめの先端を持つスパチュラに持ち替えて、細かな筋状ディティールを刻みます。

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最後に筆を使い、スカルピー表面をエナメルシンナーで軽くなでつけ、全体に柔らかな印象を持たせます。

非常に簡単な短時間の作業で申し訳ないのですが、これだけでもほぼ髪の毛のように見えるディティールができたのではないでしょうか。

このようにヘラ型スパチュラは、細かなディティールを加えるために使用しています。

髪の毛ディティールだけでなく、フィギュア全体のほぼ全てのディティールはこのスパチュラでカバーできると言えるほど、汎用性の高い形状を持ったスパチュラが、このヘラ型です。

作業例の中でスパチュラを一度持ち替えていますが、これは加えるディティールの大きさに合わせています。

ざっくりとしたディティールには大きめの先端を持つスパチュラ、それよりも細かな部分には、もっと小さな先端を持つスパチュラ、という具合に使い分けています。

次に先端が球の形をした「球型」スパチュラですが、このスパチュラはディティールを刻むというよりも、先端が尖った「ヘラ型」では造形が難しい、奥まった部分などの表面を馴らすために、よく使用しています。

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画像例のような奥まった部分(例えば、鼻と眼の間部分など)は、先端が尖ったスパチュラでは、どうしても粘土表面をひっかいてしまい、滑らかな面造形がしにくい場合があります。

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尖ったスパチュラで荒れた粘土表面(主に凹面)を、小さな球状の先端を持ったスパチュラで滑らかにします。

「球型」スパチュラの使用法はこの例だけではなく、その先端形状に合ったいろいろな使い方が考えられます。

「球型」スパチュラも、「ヘラ型」スパチュラと同じく、ディティールの大きさに合った数種類の先端を用意しておくことが望ましいでしょう。


・スパチュラは手作り

自分の造形のやり方に合ったスパチュラを見つけることが、効率の良い造形の近道です。

しかし、前述したようにスパチュラは個人専用であり、自分にぴったりのものを見つけることは簡単ではありません。

冒頭で紹介した数々のスパチュラですが、これらも、私個人に合うものがないかといろいろと試した結果、自然に集まってしまったものです。

したがって冒頭に掲げた画像に写る、ほとんどのスパチュラは使用していないと言っても過言ではありません。

現在、よく使用しているスパチュラは、以下の数種類だけです。

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(この4種類でほぼ全ての造形作業を行っています)

もっともよく使用しているスパチュラは、画像の左端に写っているものですが、これは先端形状を市販のものから変更しています。

市販のままでは使いにくかったので、金属加工用のグラインダを使用して、形状を研ぎ出しました。

ここまでしてようやく、個人的に使いやすいスパチュラが手に入ったのです。

このように、本当に使いやすいスパチュラ(に限らず、道具全般)は、最終的に手作りの必要があるかもしれません。

もし、個人の好みに合わせた市販品のスパチュラを店頭に並べようとすれば、無限のバリエーションを用意しなければいけないでしょう。

自分にあったスパチュラを手作りすることは、仕方のないことなのです。

ヘラ型スパチュラは、このように個人の好みが大きく作用しますが、球型スパチュラはそこまで個人の好みに影響されません。

球型スパチュラは先端が球状をしていさえすれば、たいていのものは使用できます。

店頭で使えそうだなと思うものがあれば、できるだけ確保しておくことをお勧めします。

ヘラ型スパチュラでも、市販品がまったく使えないかと言えば、決してそんなことはありません。

一例を挙げれば、タミヤ社の「調色スティック」と呼ばれる商品は、かなり便利に使用できるヘラ型スパチュラです。
(スパチュラとして販売されている商品ではないのですが…)

また、爪楊枝も粘土表面の細かな造形には、かなり有効です。

スパチュラはこうである、という先入観を捨ててみれば、身の回りにはかなり使えるモノが溢れていると思います。

どんなものでも、とりあえず試してみるという意識が、自分にあった道具を見つけるために大切なことだと思います。

ちなみに、ここまでで紹介してきたスパチュラの多くは、いわゆる粘土造形用の「スパチュラ」として、店頭に並んでいることはほとんどないと思います。

私の経験上、店頭で「スパチュラ」という名称で売られているものは、フィギュア造形に関してですが、使用しにくいものがほとんどです。

とりあえず市販品を店頭で探そうとお考えなら、革細工コーナーやクラフトコーナーを探してみる方が、期待するものが見つかる可能性が高いと思います。


・個人用スパチュラの作り方

市販品から探すことを省略して、始めから手作りしてしまうという方法もあるでしょう。

この場合の手軽な方法を、最後に紹介しておきます。

私は、市販の金属製スパチュラを自分用に改造しましたが、スパチュラは特に金属である必要はありません。

ディティール造形用なので、特に先端に力がかかることもなく、またオーブンに入れるわけでもないので、熱に強い必要もありません。

スパチュラそのものの素材にこだわる必要は、それほどないのです。

それならば、木材等の加工しやすい素材から、先端部分を削りだしてやれば良いわけです。

一番簡単な方法は、割り箸を利用する方法です。

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(割り箸の先端を加工し、使いやすいスパチュラを作る)

割り箸の先端をカッターナイフで加工します。

使いやすい形状を見つけ出すまでには、何度かの試行錯誤が必要になりますが、加工が簡単で安価な割り箸ならば、それほどの苦労はないと思います。

先端が好みの形状になれば、瞬間接着剤を加工した部分に染みこませ、硬化させます。

瞬間接着剤が完全硬化したあとで、サンドペーパーで表面を磨けば、強度的にも形状的にも、充分に使用に耐えるスパチュラができあがります。

金属製のスパチュラはそれなりに高価なものなので、使用することのない道具に無駄な出費をするリスクを考えれば、はじめからこの方法でスパチュラを自作してしまうという選択も、考慮に値するでしょう。

スパチュラに限らず、道具全般に言えることですが、手に馴染む使いやすい道具というものは、ある程度の試行錯誤の上で、ようやく手に入るものだと思います。

しかし、使える道具と同時に、使えない道具も、実際に使用してみなければわからないものです。

できるならば、多くの道具を実際に手に取ってみて、それぞれの使い心地をご自分で判断できるような経験を積んでもらいたいと思います。

posted by fgdiary at 11:36| Comment(158) | 日記