2011年07月08日

スパチュラについて

・スパチュラは、個人専用

この先の工程では、ここまでで紹介してこなかった重要な道具を使うことになります。

その道具は、粘土を使ってフィギュアを作る場合に欠かせない道具、スパチュラ(spatula)です。

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(スパチュラ各種)

スパチュラとは一般的な道具である「ヘラ」をあらわす言葉ですが、フィギュア造形においては、大きくて平べったい道具というイメージではなく、もっと先端の小さな、細かな細工用の棒、というところでしょうか。

粘土は柔らかな塊なので、指先で充分にカタチを変えることができます。

しかし、指先で変えられるカタチには限度があります。

1/8程度の大きさのフィギュアでは、全体の大まかなカタチやだいたいのポージングぐらいまでが、指先でできる限界ではないでしょうか。

指先での造形が限界に達したら、その先はスパチュラの出番です。

スパチュラは指先の延長となり、指先だけでは限界がある細かなディティールを、粘土表面に刻み込むことが可能となります。

ここで注意しなければいけないことは、「スパチュラ」とひとことで言っても、その内容は千差万別だということです。

スパチュラは指先の延長、と書きましたが、これは比喩ではありません。

スパチュラを使い慣れてくると、指先の繊細な感覚がそのまま、スパチュラの先端を通して粘土表面に伝わるのがわかるようになると思います。

そして、指先の感覚が人それぞれで違うように、その延長となるスパチュラが人それぞれで違うモノになることは当然のことであり、スパチュラという言葉に含まれる道具の内容(おおまかに言えば先端の形状)も、使う人の数だけほぼ無限にあるということになります。

これはすなわち、スパチュラという道具を一般化して説明や解説をすることはほとんど不可能であり、無意味であるということです。

しかし、だからと言って、説明不可能です、としてここで終わるのはあまりに気が引けてしまいます。

ここからは、私が普段使用している私専用のスパチュラをご紹介していきますが、前述したように、私専用のスパチュラが他の方々にとっても使いやすいとは限りませんので、あくまでも参考としてお読みください。


・スパチュラの種類「ヘラ型」と「球型」

私が使用しているいくつかのスパチュラの画像は冒頭に掲載しましたが、よく見ていただくとそれらは、おおまかにふたつのグループに分けられるのがわかると思います。

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(ヘラ型スパチュラ)

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(球型スパチュラ)

スパチュラはだいたい二つのグループ、「ヘラ型」と「球型」に分けられます。

もちろんこのふたつ以外にも、針状のものやナイフ型の形状をしたものもありますが、用途は限られますし、これらはスパチュラというには無理がある形状をしていると思いますので、別の道具としてここでは除外しておきます。

以下に、私が日常使用しているスパチュラの、先端部の画像を掲載してみます。

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これらのヘラ型スパチュラは主に、筋状のディティールを粘土表面に施すために使用します。

簡単ですが、ヘラ型スパチュラを使った髪の毛状ディティール造形の例を挙げてみます。

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スカルピーを小さな房状にして、三つほどくっつけてみました。

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大きめの先端を持つスパチュラを使用して、スカルピー表面にざっくりしたディティールを入れました。

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スパチュラはそのままで、表面の凹凸を調整します。
アニメ調デフォルメなら、この状態で終わらせてもいいかもしれません。

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小さめの先端を持つスパチュラに持ち替えて、細かな筋状ディティールを刻みます。

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最後に筆を使い、スカルピー表面をエナメルシンナーで軽くなでつけ、全体に柔らかな印象を持たせます。

非常に簡単な短時間の作業で申し訳ないのですが、これだけでもほぼ髪の毛のように見えるディティールができたのではないでしょうか。

このようにヘラ型スパチュラは、細かなディティールを加えるために使用しています。

髪の毛ディティールだけでなく、フィギュア全体のほぼ全てのディティールはこのスパチュラでカバーできると言えるほど、汎用性の高い形状を持ったスパチュラが、このヘラ型です。

作業例の中でスパチュラを一度持ち替えていますが、これは加えるディティールの大きさに合わせています。

ざっくりとしたディティールには大きめの先端を持つスパチュラ、それよりも細かな部分には、もっと小さな先端を持つスパチュラ、という具合に使い分けています。

次に先端が球の形をした「球型」スパチュラですが、このスパチュラはディティールを刻むというよりも、先端が尖った「ヘラ型」では造形が難しい、奥まった部分などの表面を馴らすために、よく使用しています。

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画像例のような奥まった部分(例えば、鼻と眼の間部分など)は、先端が尖ったスパチュラでは、どうしても粘土表面をひっかいてしまい、滑らかな面造形がしにくい場合があります。

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尖ったスパチュラで荒れた粘土表面(主に凹面)を、小さな球状の先端を持ったスパチュラで滑らかにします。

「球型」スパチュラの使用法はこの例だけではなく、その先端形状に合ったいろいろな使い方が考えられます。

「球型」スパチュラも、「ヘラ型」スパチュラと同じく、ディティールの大きさに合った数種類の先端を用意しておくことが望ましいでしょう。


・スパチュラは手作り

自分の造形のやり方に合ったスパチュラを見つけることが、効率の良い造形の近道です。

しかし、前述したようにスパチュラは個人専用であり、自分にぴったりのものを見つけることは簡単ではありません。

冒頭で紹介した数々のスパチュラですが、これらも、私個人に合うものがないかといろいろと試した結果、自然に集まってしまったものです。

したがって冒頭に掲げた画像に写る、ほとんどのスパチュラは使用していないと言っても過言ではありません。

現在、よく使用しているスパチュラは、以下の数種類だけです。

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(この4種類でほぼ全ての造形作業を行っています)

もっともよく使用しているスパチュラは、画像の左端に写っているものですが、これは先端形状を市販のものから変更しています。

市販のままでは使いにくかったので、金属加工用のグラインダを使用して、形状を研ぎ出しました。

ここまでしてようやく、個人的に使いやすいスパチュラが手に入ったのです。

このように、本当に使いやすいスパチュラ(に限らず、道具全般)は、最終的に手作りの必要があるかもしれません。

もし、個人の好みに合わせた市販品のスパチュラを店頭に並べようとすれば、無限のバリエーションを用意しなければいけないでしょう。

自分にあったスパチュラを手作りすることは、仕方のないことなのです。

ヘラ型スパチュラは、このように個人の好みが大きく作用しますが、球型スパチュラはそこまで個人の好みに影響されません。

球型スパチュラは先端が球状をしていさえすれば、たいていのものは使用できます。

店頭で使えそうだなと思うものがあれば、できるだけ確保しておくことをお勧めします。

ヘラ型スパチュラでも、市販品がまったく使えないかと言えば、決してそんなことはありません。

一例を挙げれば、タミヤ社の「調色スティック」と呼ばれる商品は、かなり便利に使用できるヘラ型スパチュラです。
(スパチュラとして販売されている商品ではないのですが…)

また、爪楊枝も粘土表面の細かな造形には、かなり有効です。

スパチュラはこうである、という先入観を捨ててみれば、身の回りにはかなり使えるモノが溢れていると思います。

どんなものでも、とりあえず試してみるという意識が、自分にあった道具を見つけるために大切なことだと思います。

ちなみに、ここまでで紹介してきたスパチュラの多くは、いわゆる粘土造形用の「スパチュラ」として、店頭に並んでいることはほとんどないと思います。

私の経験上、店頭で「スパチュラ」という名称で売られているものは、フィギュア造形に関してですが、使用しにくいものがほとんどです。

とりあえず市販品を店頭で探そうとお考えなら、革細工コーナーやクラフトコーナーを探してみる方が、期待するものが見つかる可能性が高いと思います。


・個人用スパチュラの作り方

市販品から探すことを省略して、始めから手作りしてしまうという方法もあるでしょう。

この場合の手軽な方法を、最後に紹介しておきます。

私は、市販の金属製スパチュラを自分用に改造しましたが、スパチュラは特に金属である必要はありません。

ディティール造形用なので、特に先端に力がかかることもなく、またオーブンに入れるわけでもないので、熱に強い必要もありません。

スパチュラそのものの素材にこだわる必要は、それほどないのです。

それならば、木材等の加工しやすい素材から、先端部分を削りだしてやれば良いわけです。

一番簡単な方法は、割り箸を利用する方法です。

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(割り箸の先端を加工し、使いやすいスパチュラを作る)

割り箸の先端をカッターナイフで加工します。

使いやすい形状を見つけ出すまでには、何度かの試行錯誤が必要になりますが、加工が簡単で安価な割り箸ならば、それほどの苦労はないと思います。

先端が好みの形状になれば、瞬間接着剤を加工した部分に染みこませ、硬化させます。

瞬間接着剤が完全硬化したあとで、サンドペーパーで表面を磨けば、強度的にも形状的にも、充分に使用に耐えるスパチュラができあがります。

金属製のスパチュラはそれなりに高価なものなので、使用することのない道具に無駄な出費をするリスクを考えれば、はじめからこの方法でスパチュラを自作してしまうという選択も、考慮に値するでしょう。

スパチュラに限らず、道具全般に言えることですが、手に馴染む使いやすい道具というものは、ある程度の試行錯誤の上で、ようやく手に入るものだと思います。

しかし、使える道具と同時に、使えない道具も、実際に使用してみなければわからないものです。

できるならば、多くの道具を実際に手に取ってみて、それぞれの使い心地をご自分で判断できるような経験を積んでもらいたいと思います。

posted by fgdiary at 11:36| Comment(158) | 日記