2011年04月18日

粘土について(2)

それでは、これから粘土造形を始めようとする方々は、スカルピーと石粉粘土の、どちらを選べばよいのでしょうか。

造形作業的には、どちらを使っても最終的にはほぼ同じものを製作することが可能です。
したがって選択は、両者の特徴から個人の事情に合わせたものを選ぶことになります。

以下に両者の特徴を記してみます。

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(石粉粘土ファンド)

石粉粘土は、主成分が石の粉であり乾燥により硬化します。
粒子の細かさも充分であり、ディティール造形や表面処理も問題はありません。

乾燥により硬化、ということからわかるように、作業途中でしばらく放っておくと固まってしまいます。
それを防ぐために、常に表面への水分補給が必要です。
したがって造形が完成するまでは、原型の保管管理に気を使わなくてはなりません。

主なブランドは、ファンド(アートクレイ社)、フォルモ(パジコ社)、ラドール(パジコ社)ですが、フィギュア原型にはおそらくファンドが一番多く用いられています。

クラフトや手芸を扱うお店ならたいていは置いてあり、400グラムで500円ほどです。

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(いろいろなスカルピーと、周辺製品)

スカルピーは、造形用として開発された樹脂粘土です。
成分は塩化ビニルとフタル酸エステルです。
スーパースカルピー、グレイスカルピー、プリモ等、色や使い心地の違いでいくつかの種類があります。
硬化は熱を加えることによって行いますが、硬化温度が140度前後と高いので、熱を加える機器(温度調節機能付きオーブン)が必要になります。

また、高すぎる熱を加えると有害ガスが発生する場合があるので、注意が必要です。

熱を加えるまでは粘土状を保ちますが、長時間放置すると表面が乾燥し、ひび割れなどが発生する場合があります。
しかし、数週間以上放置する場合以外は、製作途中の原型保管にそれほどの工夫は必要ありません。

入手は比較的難しく、造形素材を扱う専門店以外の店頭で見かけることは、ほとんどありません。
入手にはネット通販等を利用するのが確実だと思われます。

価格は、454グラムで2000円ほどです。


以上が両者のおおよその特徴ですが、大きな違いは、硬化方法、価格、入手方法です。

両者の特徴を眺めてみるとやはりスカルピーの方が、ハードルが高く感じられます。
温度調節機能付きオーブンが必要であったり、価格が石粉粘土の4倍ほどもしたりします。

しかし、現実の作業を始めてみるとわかることですが、石粉粘土の場合も、自然乾燥だけでは作業性が悪いためにドライヤーやオーブンを使用したり、購入し保管しておいた開封前の石粉粘土が乾燥硬化して使用できなくなっていたりすることがあります。

これはあくまでも個人的な印象ですが、様々な要素を考え合わせてみると、石粉粘土もスカルピーも、コストパフォーマンス的にはほぼ同等ではないかと考えています。

スカルピーの場合は、初期投資に少々お金がかかるというだけで、ある程度長期間に渡り造形を行おうと考えた場合、どちらも同じくらいのコストになるだろうと、私は思います。

そう考えた場合、やはり私は、はじめからスカルピーの使用をお勧めしたいと思います。
造形専用として作られた使い心地は、決して期待を裏切るものではありません。

これから粘土造形を始めようと思う方々にこそ、私はスカルピーの使い心地を味わっていただきたいと考えます。

なお、このブログでは造形にスカルピーを使用しますが、石粉粘土でも同様の造形が可能です。

とにかくすぐにでも造形をしてみたいという方は、加熱機器の必要がない石粉粘土を、まずは使ってみてください。

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(このブログでは、主にグレイスカルピーを使用します)


参考

スカルピー
http://www.daicelfinechem.jp/hobby/scul1.html
(国内販売元ダイセルファインケムのサイト)


石粉粘土
http://www.artclay-fando.co.jp/
(アートクレイ社 ファンド)

http://www.padico.co.jp/products/catalogue/clay/
(パジコ社 フォルモ、ラドール)

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2011年04月11日

粘土について(1)

これからここで行うフィギュア原型製作は彫塑方式で、と前回書いたわけですが、全てを粘土だけで行うわけではありません。

粘土だけで製作できないこともないのですが、原型製作としての効率を上げるために様々な素材を使用します。

主に彫塑的な手法を使うというだけで、ときにはパテを削ったりときにはハンダ線やビーズを貼り付けたりするかもしれません。

しかしそれでも、フィギュア本体の大部分は粘土で製作するわけですから、素材となる粘土のウエイトが大きいことに間違いありません。

したがって、その粘土にどのようなものを使うのか? という選択は重要です。

ひとことで粘土といっても、かなりの種類が世の中には出回っています。

誰もが子供の頃に一度はさわったことのある、油粘土。
クラフトによく使用され100円ショップでも見かける、紙粘土。
自動車のエクステリアデザインモデルなどに使用されるインダストリアルクレイ。
指輪やアクセサリを手軽に作るための銀粘土も、粘土のひとつです。

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(さまざまな種類の粘土)

上記以外にも粘土にはさまざまな種類があり、これから粘土造形を始めようとする方にとっては迷うところです。

このように数々ある粘土の中で、私たちがこれから行おうとしているフィギュア製作に最も適している粘土はどれでしょうか。

結論から先に話してしまうと、現在フィギュア原型製作で最も使用されている粘土は、スカルピー(SCULPEY)と、ファンドをはじめとする石粉粘土です。

スカルピーは、アメリカのポリフォーム社が製造し、国内ではダイセルファインケム社が販売している熱硬化型の樹脂粘土であり、ファンドはアートクレイ社が販売する石粉粘土です。

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(スーパースカルピー)

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(石粉粘土ファンド)

原型製作に携わる多くの方が使用するこの粘土のどちらかを選択しておけば、初めての方でもまず間違いはありません。

これらの粘土を使ってください、と言い切ることは簡単なのですが、その前に、なぜスカルピーとファンドがフィギュア原型製作に多く使用されているのかを考えてみます。

前回お話したように、フィギュア原型はワンオフモデルではない、ということが前提です。
原型完成後に、シリコーンゴムなどで型を作ることが一般的なのです。
(シリコーンゴムによる型取りについては、いずれ詳しくお伝えします)

そのために、原型は固体でなければなりません。

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(シリコーンゴム型の例。個体である原型を、液体状のシリコーンに埋没させる。その後シリコーンをゴム状に硬化させてから原型を抜き出すと、型ができる)

カチカチでなければいけません、とまで言うつもりはないのですが、少なくとも手で持ち上げても元の形が歪まない程度の固さは必要です。

つまり、油粘土のようにいつまでも柔らかく、固まらない粘土は使用できません。

また、製作途中の原型が、時間経過と共に変形してしまうことも、できる限り避けなければなりません。

紙ヤスリなどを使って表面処理ができるかどうか、細かなディティールを加えることができるかどうか、これらも大切なポイントです。

粘土を構成する粒子が大きく、表面をペーパーがけすると荒れてしまうような粘土は、やはり使用を控えた方がよいでしょう。
粒子が大きいということは、細かなディティールを入れることが難しくなるということも意味しています。

紙粘土は、硬化時の水分蒸発によりヒケ(収縮)やひび割れが起きる可能性が比較的高く、また粒子が粗いために表面処理に手間がかかります。

一番手軽に入手できそうな粘土が使用しにくいというのも残念ですが、これらの理由から、やはり紙粘土は使用を控えた方が無難です。

特殊な使用法をする粘土も、まずは避けた方がよいでしょう。

インダストリアルクレイは、通常状態ではクレヨンのような固体ですが、熱を加えるとチョコレートのように溶ける粘土です。慣れればそれなりに扱いやすいので原型に使用する方は多いのですが、扱い方が特殊な部類に入るため、はじめはやはり避けた方がよいと思います。

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(インダストリアルクレイ。熱を加えると液状に軟化する)

このようにひとつずつ考えていくと、フィギュア原型製作にとって都合がよい粘土が持つべき、だいたいの特徴が把握できてきます。

1造形後に、硬化させることができる。
2硬化時の変形が少ない。
3粒子が細かく、表面がなめらかになる。
4作業性がよい。
5入手が比較的容易である。

おおよそのところで、この5点をクリアできる粘土があれば、それはフィギュア原型に使用できることを意味しています。

そして、現在のところこれらの要点をクリアする粘土は、スカルピーと石粉粘土くらいしか見つけられないのです。

逆に言えば、現在粘土でフィギュア原型製作を行う方たちのほとんどが、このどちらかを使用して造形を行っているということです。

posted by fgdiary at 14:19| Comment(1) | 日記

2011年04月04日

フィギュアを作る

フィギュアを作ると言っても、その製作方法はたくさんあります。

おおまかには、次のふたつに分けられるでしょう。

1 木や石、パテの固まりからカタチを削り出していく方法。
2 粘土を盛りつけながらカタチを出していく方法

1の方法は狭義の意味で彫刻と呼ばれ、できあがったものは彫像です。
2の方法は彫塑ですね。できあがった像は塑像と呼ばれます。

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(彫刻法の例。パテをシリコン型で塊にして、カッターナイフで削って造形する)

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(彫塑法の例。粘土をこねて造形する)

現在、フィギュアを作っている方々のほとんどが、このどちらかの方法で製作していると思われます。

このふたつ以外の方法として、コンピュータを使用した3DCG造形があります。

ポリゴンやボクセルなどを使い画面上で造形したモデルを光造型機等で立体出力する方法であり、プロの業務ではかなり普及しています。
しかしこれは、これから造形を始めようとする方々にとってはまだ特殊な方法ですので、ここではあまり触れないことにします。

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(3DCGの例。PCの画面上だけで造形していく)

それでは、1の方法と2の方法ではどちらがいいのか? ということになると、これは簡単には決定できません。
基本的には個人の好みの問題、と言ってしまってもいいでしょう。

難易度と作業性から言えば、彫塑方式の方が、全体の行程を通して扱いやすい方法だと思います。

粘土を使う彫塑方式は、何度も気の済むまで造形の繰り返しができ、粘土の削り盛りでボリュームのコントロールが自由自在です。

それに比べ彫刻方式は、一度削り落とした部分の再盛り付けに手間を必要とします。
パテなら再盛り付けも可能ですが、木材や大理石なら盛り付けは不可能です。

これが、彫塑よりも彫刻の方が一般的に高く評価される所以だと思いますが、フィギュアを作る場合は、そのような一般的評価よりも作業性を優先することをお勧めします。

なぜならフィギュアの場合、ほとんどが「原型」として作るからです。
このブログでも、最終的には複製作業まで行うつもりですので、これから製作していくフィギュアを原型として扱います。

「原型」とは何か? を詳しく説明し始めるとけっこう大変なことになるのですが、おおよそのところで、複製を取るための元のカタチ、とお考えください。

世の中に出回る工業製品には、すべて原型が存在します。
コンピュータ内のデータから直接金型を作るという方式もありますが、フィギュア的な製品にはまず間違いなく原型があると考えていいでしょう。

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(工業製品の原型と製品の例)

たったひとつの原型から型を作り、そこから大量にコピーを作るわけです。

その最初のひとつを作る人が、いわゆる原型師(原型士、原型屋)です。
複製を作るための元型を作るからこそ、「原型」師なのです。

複製を作り、その複製こそが人目に触れる製品になるわけですから、原型そのものの作り方には個人の好み以上のこだわりを持たせる必要はありません。

大理石を彫刻して原型を作ってももちろんかまわないわけですが、原型としては、こだわる部分を間違えていると言わざるを得ないでしょう。

したがって、このブログでこれから作るフィギュアの製作方法として、作業性が最も優れていると考えられる、彫塑方式を採用したいと思います。

当然のことながら、フィギュアは作りたいが複製などするつもりはない! という方もいらっしゃるでしょう。

いらっしゃるでしょうではなく、もしかしたらそういう方々の方が多いのかもしれませんが、その場合は原型ではなく、ワンオフ(一品物)の造形物ということになります。

ワンオフモデルの場合、製作方法はそれこそ自由です。
大理石を使ったミケランジェロ、木材を使用した運慶など、ワンオフモデルに制限はありません。

しかし、これから造形をやってみたいとお考えなら、私はやはり、まずは粘土を使った彫塑をお勧めします。

作業性ももちろんですが、それ以上に、自由気ままに造形ができるという部分が何よりも大きいメリットだと考えるからです。

まずは、とにかく気楽に造形を始めてみる。
それが一番大切なことだと思います。

posted by fgdiary at 23:49| Comment(3) | 日記